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幻想即興曲

<第一楽章 出会い>

今日から新学期。
僕、新谷利彦と双子の弟利幸は今日から高校生へと進級する。
中学3年、いやもっと前から受験勉強を始めて二人揃って憧れの高校へ合格できた。

「利彦!自分の名前見っけたか?」

そうだった。今クラス分けを見ていたんだ。

「あっ、あった。僕はB組だ。利幸は?」
「俺はC組。ま、いつも通り分かれたな。」
「一回も一緒のクラスになったことないよね。」
「双子だからなぁ。」

僕と利幸は双子なのに全然似ていない。
僕は凄く女っぽく利幸は男っぽい。(顔つきだけどね)
口調も性格も全然似ていない。でも、声はまったく同じ音。
僕の一人称は「僕」。これだけ連発していればわかるか。笑
利幸は「俺」。暴力的?で凄く活発なんだ。
性格もまったく逆。
僕は休み時間とか大好きな本などを読んですごしている。
今のMyブ-ムは夏目漱石。「坊ちゃん」とか「吾輩は猫である」の作者。
昔の千円札の顔だよ。ダンディ-なおじさん。さすがに知っているよね?
おとなしくて勉強は出来る方だったからいじめられやすかったんだ。
でも、いつも利幸に守ってもらっていた。
腕っぷしでね・・・(後始末が大変だったけど・・・汗)
放課後は勝手に音楽室のピアノを借りて弾いていたんだ。
ピアノは本の次に好きかな。
利幸はいつもバスケをやっている。
僕が小学一年生の誕生日プレゼントにピアノの楽譜を頼んだとき、
利幸はバスケのゴ-ルを頼んでいたっけな。庭に取り付けてもらってたんだ。
ま、今はすごいボロボロになってるけど。
成績は・・・ま、もちろん僕の方がいいけどね。

「利彦!俺は向こうだから!じゃ、又放課後。」
「うん。じゃあね!」

受験のときに来たことがあるけど、教室が広い!
中学のときは机があるだけだったのにとても狭かった。
ここは机があり個人ロッカ-までついていてもまだ余裕がある。
し・か・も個人ロッカ-には鍵までついている。南京錠だけどね。
僕は自分の席を見つけいつも通り本を出して読み始める。

「おい!そこのガリ勉!」

後ろから急に話をかけられた。
びっくりして後ろを振り向くと見覚えのある顔があった。
でも・・・名前を思い出せない。
黙りこくっていると相手が話し出した。

「忘れたん?ま、当たり前やな。俺、進藤隆。えっと、小学校の頃利幸といつもバスケしてた奴や。」
「あぁ。進藤さんか!」
「お前たしか利幸の兄貴の利彦・・・やったっけ?」
「うん。新谷利彦。利彦ってよんでいいからね。」

小学生の頃利幸と朝から晩まで一緒にバスケをやっていた隆君。
利幸の親友。僕とはあまり面識なかったな。
たしか生まれたころから大阪にいたんだっけなぁ・・・。
中学の時にまた大阪にもどったんだっけかな。

「てかさ、さんづけやめへんか?キモイっちゅ-の。隆でええよ。」
「あっ、じゃぁ隆君って呼ばせてもらうね。」
「君って・・・。ま、ええか。利幸もここの高校なん?」
「うん。そうだよ。えっと、C組だったっけな。」

担任の先生が入ってきたので会話は中断。
担任の先生は大学受験のことをグダグダ話している。
こんな話きいていられない。いつも通り窓の外をボ-ッと眺めていた。
すると、校庭の真ん中にあるケヤキの根元に一人の中学生がたたずんでいるのを見つけた。
ん?何で中学生ってわかったかって?
そりゃ、学ラン着てりゃわかるよ。
ブレザ-を着ていたらわからなかったかも。
ここの高校の制服はブレザ-なんだ。

「以上!明日から授業が始まるから忘れ物をしてこないよ-に!」
「起立!礼!」

やっと終わった・・・。
あのながったらしいお話が。

僕はあのケヤキのところにいた中学生の所へ行ってみようと思った
下駄箱についたら利幸がいた。

「おっせ~なァ。待ちくたびれちゃったぜ。」
「いや、あのハゲ先生のお話が長くって。ごめんね。」
「おいおい、いきなりハゲ先生かよ。優等生なのにそんな・・・」
「ま、きにしないでよ。」
「じゃぁ、帰ろうぜ!」
「あっ、ちょっとまって。ケヤキの下に中学生がいたんだ。見ていこうよ。」
「中坊?何で高校に中坊が?」
「わかんないよ。だから見に行こうってば。」
「あのさ、今思ったんだけどもしかして先生の話し聞かずに窓の外見てた?」
「あったり~。」
「まったく利彦は中学の頃とかわんねぇな。」
「そういう利幸は寝てたんでしょ?」
「ハハハッ!あったり。」
「とりあえず見にいこう!」
「ま、いっか。」

僕と利幸は校庭に出た。
まだ、あの中学生はいるみたいだ。

「何処にいるんだよ。そんな中坊。」
「いるじゃんよ。ほらっケヤキの下にたたずんでるじゃん。」
「誰もいねぇぞ。利彦、熱でもあるんじゃないか?」
「ほらっ・・・」

無理やりケヤキの下まで利幸を引っ張って中坊の肩をたたいてみた。

「君!」
(ん?あれ、君は僕の頃が見えるのかい?)
「見えるって・・・そりゃぁね。」
「おい、利彦・・・誰と話してんだよ。誰もいないじゃん」
「えっ!利幸見えないの?!ほらっ・・・」
(そんなに引っ張るなよぅ。つか見えなくて当たり前だし。)
「・・・見えなくて当たり前?」
(俺、幽霊だし)
「・・・・・・・・・はぁ!?!?」
「おい利彦、だから誰としゃべってんだよ!」
「・・・幽霊?」
「幽霊?!なんだそりゃ・・・。まじでいんのかよ。」
「そうみたいだね。僕にははっきり見えるし。あっ、でもちょっと薄いかも。」
「あ~ぁ・・・なんかやっかいなことになりそうだなぁ。」
(やっかいってなんだよ!!)
「あぁ、ごめんごめん。こいつは利幸って言って双子の弟なんだ。」
(双子?!似てないなぁ・・・)
「まぁ、いつも言われるよ。」
「お~い!!利彦!!俺には利彦が独り言を言っているようにしか見えないぞ。つか怪しいぜ。」
「あっ、そっか。声聞こえないもんね。」
「よくわかんねぇから、とりあえずかえろ-ぜ。」
「う~ん、そうだね。じゃあ、君・・・名前は?」
(俺?結城桐吾。)
「なんか、珍しいね。あ、僕は新谷利彦。じゃあ、結城君またね!」
(桐吾って呼んでいいぜ。俺はたぶんずっとここにいるから。暇だったら話しかけてくれよ。)
「うん。わかった。」

<第二楽章 調べ>

帰り道。
「おい、結局利彦が話していた中坊って幽霊なのか?」
「うん。そうみたい。自分で名乗ってたし。結城桐吾君ってゆうんだ。」
「結城・・・・結城・・・・あっ!そういえば誰かに聞いたことある!」
「えっ!なにを?」
「なんかその結城ってやついじめられて中学校の屋上から飛び降り自殺したって話。隆から聞いたんだ。」
「本当に?!・・・そうなんだぁ。あ、そういえば新聞に書いてあったっけなぁ・・・。あんまり印象に残ってなかったんだけど。」
「利彦は偉いよなぁ・・・。ちゃんと新聞読んじゃってさ。ジジくさいけど。」
「まぁ、日課になっちゃってるしね。そういえば隆君、僕と同じクラスだったよ。」
「おぉ!!隆もここの高校だったのか!じゃあ、隆もきっとバスケ部だな!!」
「利幸ももちろんバスケ部はいるんでしょ?」
「あぁ!そりゃぁな!利彦はどうすんだよ?」
「僕?・・・ん~まだ決めてない。吹奏楽部とかもいいけど文学部もいいなぁ」
「たまには運動系の部活もやってみれば?」
「僕が?!無理無理。」

結局家に着くまで、あの桐吾君の話はあまりしなかった。
僕は帰ってから、桐吾君の存在がちょっと気になってネットで調べることにした。
僕は前に誕生日プレゼントでノ-トパソコンを買ってもらったんだ。
他の家族はみんな機械オンチでつかわなくてさ。僕専用にかってもらったんだ。

「え~と・・・結城桐吾(15)3月11日△△中学校の屋上から飛び降りる。
原因はいじめか、先生の体罰か、親の虐待か、まだよくわかっていない。学校側はそのことについてなにも話そうとしなかった・・・・か。」

よくよく見てみると、その中学校は僕が通っていた中学校のすぐ隣だった。
いじめは僕にとって苦い過去を思い出すものであったから、あまりそのときの記事をちゃんと読まなかったんだと思う。
印象に残ってないわけではなかったんだ。
なにをやってものろまな僕。勉強だけ出来て、それを理由にいじめられて。
でも、利幸が守ってくれたんだ。
ま、そんなことはどうでもいいんだけどね。
それより3月11日って結構最近のことだからまだ新聞残っているかもしれない、
と僕は思い新聞の束をはずして探してみた。
ちなみに、僕の家では読○新聞を購読しているんだ。

「あ、あった!」
「利彦・・・なにやってんだ?」
「わぁ!!」

後ろに利幸が突っ立っていたのだ。

「なに新聞あさりしてるんだ?」
「ほら、結城君の記事探そうと思って。」
「てうゆかさ、本当にいたのかよ?その結城ってやつの幽霊。」
「うん。僕には見えたし。」
「やっぱ見えるやつを見えないやつっているんだよなぁ・・・。俺も幽霊見てみたかったぁ。」
「ま、見えてもなんにもなんないけどね。」
「確かにそうだけどよぉ。でもなんでいまさら・・・」
「なんか、気になっちゃってさ。だってまだこっちにいるってことは成仏できてないってことだよね。」
「そうなのか?」
「たぶん・・・。僕も死後のことはよくわからないからさ。
でも本とかで成仏できない霊はまだ現実をさまよっている、って書いてあった本もあったし。」
「そっかぁ。てかさ、明日もまだあそこにいたら聞いてみればいいじゃん。」
「まあね。だからその前に情報収集しとかないとさ。」
「ふ~ん、つくづく利彦ってまじめだよなぁ。」
「いや、まじめとかそんなんじゃなくて・・・興味があるから?」
「ぷっ、利彦は幽霊に興味があんのかよ!!」
「だって、話したのも初めてだったし・・・。もしかして見たのも初めてだったかも。」
「そうだよなぁ。めったに幽霊なんか見ないし・・・つか見えないし。」
「ま、そうゆうことで事件のあった新聞を捜していたんだよ。」
「そっか。気が済むまでやっとけぇ。俺も明日付き合ってやるぜ。まだ部活ないしな。」
「うん。ありがとう。」
「じゃ、俺はバスケでもしてよっと。」
「あれ?宿題でてなかったっけ?」
「・・・・気にすんな!後で見せてくれ!じゃな!」

利幸は全速力で逃げていった・・・。

「ま、宿題見せるのなんていつものことか・・・。」

そう一人でつぶやいてから、また新聞探しを始めた。
利幸はいつも宿題を僕に頼んでくる。わかりきったことだ。
でも、憎めない奴なんだよね。

「あ、あった。」

新聞紙の束の奥のほうから取り出した新聞にその新聞は混ざっていた。
桐吾君に関する記事はとても小さかった。
「学校の屋上から飛び降り自殺」
詳しい詳細などはのっていなかった。たぶん学校側がもみ消したのだろう。
そうゆうことするの、すごい卑怯だと僕は思う。
事実をはっきりと受け止めないでなにが教育だ、ってたまに思うんだ。反抗期かな。(笑)
とりあえず、そこの記事だけはさみで切り取って、自分の部屋に戻った。
自分の部屋、といっても利幸との共同部屋だけどね。
一応は二つに分かれているんだ。
僕のスペ-スには机、ベット、本棚と結構きれいに片付いているほうだ。
利幸は・・・ま、言わなくてもわかるよね。(汗)
新聞の切抜きとネットの情報を照らし合わせてみた。
けど、結局のところいじめなのか体罰なのかそれとも家の事情とかなのかわからなかった。
学校側がひたすら自殺のことについて触れないようにしているところからいってたぶん学校側になにか問題があったんじゃないかって僕は思った。ネット上でもそんなことで騒いでいたし。
けど、事実が書いていないからどうしようもない。
今度、桐吾君に会ったらさりげなく直接聞いてみようかな。

「利彦~、利幸~、ご飯できたわよ~。」

下の階から母さんの声が聞こえた。
ずっと調べていたらもう夕飯時になっていたのか。

「いまいく!」

そういって僕は一階へと降りていった。
夕食や朝食は決まって家族一緒に食べることになっている。
今では、結構珍しいほうなのかなぁ。

<第三楽章 思い>

次の日。
今日から授業が始まる。
新しい教科書を鞄につめ終えた後利幸に声をかけた。

「利幸!!そろそろ行こう!」

と、僕は部屋を仕切っているカ-テンを開けた。

「う・・・うん?あれ?もう朝?」
「何寝ぼけてんの!!ほら!!早くしないと学校遅れるよ?」
「あ・・・ふぁ~あ。飯は?」
「僕はもう食べたよ。早く下に降りて食べてきちゃいな。用意しといてあげるから。」
「・・・おう。サンキュ。」

利幸はふらふらしながら下の階に降りていった。
利幸は朝がすっごく弱いんだ。ふらふらしてよく階段から落っこちるんだよ。
男でも低血圧ってあるんだね・・・。スポ-ツ万能のくせに。(笑)


「ゴンッ!!」


い・・・今の音はたぶん利幸が壁にぶつかった音かな・・・。
利幸の机の上から教科書を引っ張り出す。
新しいはずの教科書なのにもう表紙が折れていたり黒くなったりしている。
ま、利幸らしいか。

「利彦!!ありがと。」
「ご飯食べ終わった?」
「おう!超特急でな。ははは!」
「一応時間割り通りに用意しておいたからね。」
「おっけ。サンキュ!じゃあ行くか!」

僕と利幸は学校へ行く途中桐吾君のことを話そうとしたら、先に部活の話になってしまった。

「結局さ、利彦は部活どうするんだよ。」
「僕?」
「だって、仮入部の申し込みって今日だろ?」
「あっ、そうだったっけ。とりあえず吹奏楽かな~。」
「ふ~ん・・・。やっぱりピアノ?」
「うん。利幸はもちろんバスケだもんね。」
「おう!後で隆も誘うけどな。」
「ポジション・・・どこだっけ?」
「前に教えただろ~。俺はフォワ-ド。ちなみに隆はセンタ-だぜ。」
「背高いもんね。」

と、しゃべっているうちに学校についてしまった。
僕は急いでケヤキの下を確認した。
桐吾君がまだいるかどうか、昨日の夜から気にかかっていたんだ。

「あっ、まだいた!!」
「は?」
「ほら、桐吾君だよ!」
「あぁ、結城だっけ。」
「うん。昨日のが見間違えかもしんないと思ってさ。でもやっぱりいるよ!」
「あ~、俺のいっぺん見てみたいな~。」
「今日の帰りさ、僕桐吾君と話すから先に帰っててもいいからね。」
「たぶん、俺のほうが遅いと思うけどな。部活見てくるし。」
「あ、そっか。僕も見てこなきゃ。」
「とりあえず、今日の帰りは一緒に帰れないってことだな。」
「うん、たぶんね。じゃ!」

僕は自分のクラスに入って昨日と同じ席に着いた。
クラスにはもう半分以上の人が登校していた。

「おっす!おはよ~。」

後ろの席にどっかりと座っている隆だった。

「あ、おはよう。」
「今日から仮入部開始やな。利彦はどこにすん?」
「僕はたぶん吹奏楽かなぁ・・・。隆は?」
「俺?俺はもちろんバスケ部や!」
「そういえば利幸もバスケ部見に行くって言ってたよ。」
「おっ!そうなんか!ま、あいつのことだからあたりまえやな。」
「ぷっ、そうだよね。」

入学したてなのに今日からもう授業が始まる。
いきなり7時間授業だから疲れる・・・。

放課後。
僕は吹奏楽部をのぞきに行った。

「入部希望者?」

部屋の前にいたら急にドアが開いて先輩らしき人が話しかけてきた。

「あ、はい。そうですけど・・・。」
「なんか楽器弾けるかな?」
「えっと、ピアノなら。」
「じゃあ、ちょっと弾いてもらってもいいかな?弾ける曲でいいよ?間違えてもいいからさ。」
「え?!」
「みんなの実力を見たいから今一人ずつやってるんだ。だからなんでもいいから弾いてくれ。」

僕の胸はバクバクと鼓動が早くなっていった。
すぐに緊張してしまうたちだからさ・・・。
僕はそれを静めるように指をならしピアノの前に座った。
僕の大好きな曲を弾けばいいんだ。
落ち着いて・・・・と自分を言い聞かせる。
ショパンの幻想即興曲。


僕は震える指をピアノの上に置き弾き始めた。


いつの間にかに周りのみんなの入部試験らしきことをしていた人達も静まり返っていた。

「あの・・・・・?」
「君は即入部だね。」

先輩はにっこり笑って僕の肩をたたいた。
僕はわけがわからなかったが、とりあえず弾き終わったことにほっとした。

仮入部の紙を提出した後僕は真っ先にケヤキの元へ走った。

「はぁはぁ・・・。」
(なんだよ、そんないそいじゃって。)
「だって・・・桐吾君が・・・いなくな・・・ってたら・・・」
(はははっ!そう簡単に成仏しねぇよ。)
「そうゆうもんなの?」
(う~ん、俺にもよくわかんねぇけどそんなもんじゃねえのかなぁ)
「ふ~ん。」
(そういや、さっき音楽室からショパンの幻想即興曲聞こえたんだけど・・・お前は聞いたか?)
「うん。僕が弾いてたもん。なんか入部試験みたいなことやらされてさ~。」
(・・・俺もよく弾いてたんだ。姉ちゃんに。)
「お姉さんがいたんだぁ。」
(あぁ。俺の姉ちゃんいじめられやすくて、いつも泣いて帰ってきてたんだ。)
「・・・。」
(俺より2つも年上なのにね。でも、俺が幻想即興曲弾いてやるとすぐに泣き止むんだ。
だから、俺の姉ちゃんは俺の妹みたいな存在だったんだ。俺が死んだ今、どうなってるかは知らないけどね。)
「会いたいって思う?」
(あぁ・・・、うん。でも会っても見えないだろうしね。ハハハッ・・・)
「ところで桐吾君はずっとここにいるの?」
(えっ?まぁ、ほとんどここにいるかな。)
「たまには、違うところとかにいかないの?」
(たまにいくけど、結局ここに戻ってくるんだ。このケヤキの下落ち着くし姉ちゃんが通ってた高校なんだ。)
「そっかぁ。じゃあさ、今日僕の家に来てみない?」
(え?)
「だって、他のところに行けるんでしょ?招待するからさっ!」
(でもよぅ・・・お前しか見えてないわけだぞ?俺としゃべると独り言になるんだぜ?)
「そんなの気にしないよ。」
(親とかから変な目で見られねえのか?)
「う~ん、さぁ?」
(お前、お気楽野郎ってことか。)
「そうなんじゃないかな~。」
(・・・・・はぁ。まぁいいだろう。暇だし。)
「じゃぁ行こうっ!」

僕は無理やり桐吾君を家に招待した。
桐吾君の気掛かりは桐吾君のお姉さんのことだと思う。
だから、僕は時間をかけてでもお姉さんに合わせてやろうって思ったんだ。
見えないかもしれないけど、桐吾君がお姉さんに伝え切れなかったことを伝えられればいいんじゃないかな
って僕は思ったんだ。

「ただいま~」
「お、お帰り利彦。」
「あれ?もう帰ってたの?今日部活いったんじゃないの?」
「まだ、仮入部だからすぐに帰れるんだよ。それよりなんで利彦は遅くなったんだ?」
「ん?桐吾君と話してたから。」
「またあの結城ってヤツか。いつもあそこにいるのかよ。」
(わるかったな。)
「わるかったな、だってさ。」
「へ?!もしかして今ここにいんのかよ?!」
「うん。連れて帰ってきちゃった。」
「もっと早く言えよ~。飯もう一人分用意しなきゃ・・・ってしなくていいのか。」
「あれ?今日は母さん仕事?」
「あぁ、だから俺がもう飯作っちゃったんだよ。」
「とりあえず、上がっておいでよ桐吾君!」
(あぁ・・・おじゃましま~す。)
「ま、俺は気にしないようにするから二人で心ゆくまで語ってな。」
「んじゃぁお言葉に甘えて。桐吾君、僕がご飯食べ終わるまで二階で待ってて。」
「とりあえず、利彦も鞄とか置いて着替えてこいよ。」
「あっ、そっか。」

トントントントン

僕の階段を登る音がする。後ろから桐吾君が着いてきているのに足音がしない。
やっぱり幽霊なんだなぁって実感。

「ここが僕と利幸の部屋だよ。」
(あれ?ピアノ置いてないじゃん。)
「あぁ、ピアノは一階のリビングにおいてあるんだ。ここ狭いからさ~。」
(ふ~ん。こっちのスペースが利彦か?)
「当たり。なんでわかったの?」
(いや・・・見ればわかるよ。この汚さの違い。笑)
「ま、そうだよね。」

僕は鞄をいつもの所に置き着替え始めた。
桐吾君は物珍しそうに僕達の部屋を物色していた。
友達(?)を僕が家に招待するなんて何年ぶりのことだろうか。
僕には特定の友達がいなかった。
いつでも本を読んでいて暗かったから友達いなかったんだよね。
なんか、はじめての友達って感じで僕は少し嬉しかった。
幽霊だけどね。(笑)

「どうする?僕がご飯食べる間ここにいる?下に行く?」
(あ、ここで待ってるよ。)
「じゃぁ、すぐに行くから待っててね。」

僕は超特急で下に降りていった。
急いでご飯を食べて自分の部屋に戻ると桐吾君は僕のベットで寝転んでいた。

「そこ、寝心地良い?」
(まぁな。利彦のとこよか寝心地いいぜ。)
「ぷっ。洗濯物してない靴下とか散乱してるから気をつけたほうがいいよ。」
(あぁ、さっき危うく踏むとこだった。)
「桐吾君のお姉さんは綺麗好きだった?」
(う~ん、どっちかというと雑かな。)
「まだあの高校通ってるの?」
(あぁ。今年で高3だよ。)
「ってゆうことは、僕と桐吾君は同い年だね。」
(まぁ、そうゆうことだな。)
「お姉さんにもう一回だけでもいいからピアノ聞かせたいんでしょ?」
(えっ!?・・・・・あぁ、まぁそのことがずっと気がかりだったんだ。よくわかったな。)
「かまかけてみただけだよ。たぶんそうじゃないかな~って思って。」
(うわ、じゃぁ俺はみごとにひっかかったわけか。)
「お姉さん思いなんだね。」
(いや、なんてゆうか・・・その・・・)
「照れなくてもいいよ。そうだ!今度お姉さんを音楽室に呼ぶからさ、桐吾君お姉さんの前でピアノ弾いてみれば?」
(・・・まぁやってみてもいいけど、俺弾けるのかな?)
「指が覚えてるって。」
(いや、そうゆう意味じゃなくて幽霊なのに・・・)
「やってみればいいじゃん!下いって弾いてみようよ!」

僕はそう言って立ち上がった。
僕の予想は当たってたんだなぁ。
お姉さん思いで成仏できなかったんだろうな。

ピアノの前につくと僕はピアノの蓋を開け椅子を引いた。

「どうぞ。」
(あぁ・・・まぁやってみるか。)

桐吾君は静かに鍵盤の上に手を置いて弾きはじめた。
でも、それは音にならなかった。
桐吾君は手を鍵盤からおろしため息をついた。

(駄目か・・・)
「お姉さんがいないからだよ。きっとそうだよ。」
(・・・・・)
「お姉さんの前だったらきっと弾けるよ。可能性あるんだからやってみようよ。」
(・・・そうだな。うん。やってみるよ。)

弾くことが出来なかった。
予想はしていたけど、僕も落胆した。
これがお姉さんに思いを伝えられる唯一の方法でもあったから。
でもやってみなきゃわからない。本人の前で。


次の日僕は高3の階に行って桐吾君のお姉さんを探した。
あっさり見つかった。

「どうしたの?」
「あの、僕新谷利彦といいます。結城桐吾君の友達で・・・」
「あら、桐吾のお友達なのね。」
「それで、いきなりでホント悪いんですけど今日の放課後空いていませんか?」
「え、どうして?」
「いや、あの少し話したいことが・・・。」
「・・・いいわよ。どこで待てばいいのかな?」
「第二音楽室でお待ちいただけますか?」
「わかったわ。じゃぁまた放課後。」

昼休み、僕はすぐにケヤキの下へ行って桐吾君にそのことを話した。

(そっか、今日の放課後か。)
「うん。」
(・・・弾ければいいな。)
「そうだね。」

桐吾君は少し嬉しそうだったけどやっぱり複雑そうな表情をしていた。
不安もあるんだろうな。

午後の授業、ずっと僕うわの空だった。
先生から注意を3回もされた。

そうこうしているうちに放課後がやってきた。

「桐吾君いこ。」
(おう。気合十分だ。)

第二音楽室の扉を開けるともうお姉さんは待っていた。

「すいません。待たせてしまって。」
「まだ来たばかりだから全然平気よ。」
「あの、聞いて欲しいんです。桐吾君のピアノを。」
「えっ?桐吾はもう・・・」
「お姉さんのことがきがかりでまだいるんです。僕、幽霊見える体質で・・・あの、信じてもらえないかもしれないけど本当にいるんです。まだ成仏できなくて・・・。」
「・・・いいわよ。私もずっと桐吾のこと気になっていたの。」
「じゃぁ、弾いてもらいますね。」

僕は第二音楽室の大きなグランドピアノの蓋を開けて椅子を引いた。

「桐吾君、弾いてみよう。」
(うん。分かってる。)

桐吾君は緊張しているのか少し震えていたけどピアノの前に座った。

ゆっくり鍵盤の上の指を走らせる。


音が鳴らない


僕は桐吾君の座っているピアノの方へ歩み寄った。
いや、無意識に体が動かされた。

桐吾君の体をすり抜け僕はピアノの前に座った。
いや、座らされたといってもいい。
鍵盤の上に自然に手が行き指が動き出した。


桐吾君のピアノを僕の指が代弁するかのようにピアノの澄んだ音色が鳴り響く。


僕の幻想即興曲とは全然違った。
落ち着いた音色。誰の心をも落ち着かせる、そんな音色だった。
これが、桐吾君の幻想即興曲。


弾き終わったあと、お姉さんは泣いていた。
桐吾君も泣いていた。僕も泣いていた。

「弾けたね。」
(うん・・・ありがとう。)
「お姉さん。今の、桐吾君が弾きました。」
「うん。わかるよ。これは桐吾がいつも私に弾いてくれた幻想即興曲だもの。私には分かるわ。」
(姉ちゃん、俺がいなくなってももう泣くなよ。今弾いたピアノを思い出して。)
「桐吾の声・・・?」
「そうですよ。」
「ありがとう。ありがとう桐吾。もう私は泣かないから安心して。」
(うん・・・。)


桐吾君は涙を拭いて僕の方に向かった。

(ありがとな・・・助かった。)
「僕も桐吾君のピアノ聴けてすごい感動したよ。」
(うん。なんか俺もう成仏するみたい。)
「ようやく安心できたんだね。」
(今までホントにありがとう。)
「あっ!ちょっと待って!1つ聞きたいことがあって、なんで、なんで桐吾君は飛び降りたの?」
(飛び降りてなんかいねぇよ。遊んでたら落ちただけさ。笑)
「えぇ!?なんだ、そうだったのか・・・。」
(んじゃ、俺はもう行くぜ。姉ちゃんまたいつか会おうな。)
「じゃあね、僕は桐吾君のこと忘れないから。」
(また幻想即興曲弾いてくれ。上で聴いてるから約束だぞ。)
「うん。わかった。絶対弾くね。」


桐吾君の姿がどんどん薄れていった。


残された僕と桐吾君のお姉さんは会釈をして別れた。



僕は大好きな幻想即興曲を弾いて思い出す。
桐吾君との思い出。
たった少しの間だったけどいろいろな感情を教えてくれた。
もうちょっとだけ一緒にいたかったな。
にしても自殺なんかじゃなかったんだな。桐吾君。
「遊んでたら落ちた」なんて拍子抜けちゃった。
ま、それも桐吾君らしいか。


僕はそんなことを思いつつピアノの蓋を閉じた。


Fin


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